田村 隆
21世紀は「遺伝子」と「量子」が融合する時代
20世紀における最大の科学的発見は「遺伝子」と「量子」であったといわれています。遺伝子(=DNA)の発見と分子生物学の発展はライフサイエンス研究を大きく変革しました。微量にしか存在しない酵素や蛋白質を遺伝子クローニングにより大腸菌内で大量に発現させ,PCRを使って蛋白質中のアミノ酸残基を自由自在に変換する蛋白質工学が登場しました。一方「量子」の発見と量子力学の誕生を端緒にして,分子から宇宙に至るあらゆる分野の謎が解明されつつあります。量子力学という基礎学問から派生した研究成果のほんの一例として,超小型で高性能なパーソナルコンピュータの登場があげられます。パソコン同志をつなげるニーズからインターネットが急拡大しました。このようなIT時代の到来は,生命の複雑な情報を鳥瞰して理解する上でいまや必要不可欠な道具となったバイオインフォマティクスの発展にもつながりました。このように,量子も間接的にはライフサイエンスの発展に貢献してきたと言えます。
しかし21世紀においては量子がライフサイエンスにさらに大きな,そして根本的なインパクトを与えるだろうと予想されます。それは,蛋白質のような巨大な生体高分子が持つ,とてつもなく複雑な波動関数をパソコンで近似計算できるようになり,分子軌道計算によって酵素分子内で起こる触媒反応を定量的かつ精密に予測できるようになると期待できるからです。分子軌道計算は「化学反応を定量的に予測出来る」という点で、今日使われている有機電子論よりも優れており,すでに低分子化合物の反応の予測や反応のしくみを解明する研究には用いられています。
私が取り組んでいる研究とは,酵素の精密分子設計を行うために分子軌道計算を導入し,定量的な反応予測に基づく蛋白質工学を確立することです。細胞内には数千種類のさまざまな酵素が存在して,私たちの命の営みを個々の化学反応を進める触媒として支えてくれています。これらの酵素の反応は,その種類と同じ数,数千種類超あるのですが,ほとんどすべての酵素は「酸塩基触媒」というしくみを利用して働いています。私の研究は,この普遍的な共通性に焦点を絞り,これをできるだけ実験で再現可能な精度でシミュレーションする研究を進めています。そうすれば,あらゆる酵素のしくみを計算によって予測することが可能になります。予測が出来れば,さらに設計まで可能になります。つまり自然界には存在していない酵素,つまり人間が望むいかなる反応でも触媒してくれる人工酵素を作ることが可能になり,引いてはライフサイエンスそのものを根本的に変革することができると期待できます。
[戻る]| ふりがな | たむらたかし |
| 氏名 | 田村 隆 |
| 所属機関 | 岡山大学 |
| 科 | 大学院自然科学研究科 |
| 専攻 | (農学系) |
| 講座 | 生物資源科学講座 |
| 研究室 | 微生物遺伝子化学研究室 |
| 役職 | 准教授 |
| TEL | 086-251-8293 |
| FAX | 086-251-8388 |
| tktamura(メール送信時には@cc.okayama-u.ac.jpを添付してください) | |
| 専門分野1 | 生物化学 |
| 保有シーズ1 | 分子軌道計算 |
| 産業への応用1 | 酵素反応の量子化学計算に基づく蛋白質の分子設計 |
| 専門分野2 | 生物化学 |
| 保有シーズ2 | 蛋白質・酵素の分子設計 |
| 産業への応用2 | 設計分子の実験的検証と蛋白質工学実験 |
| 保有設備 | WinMOPAC 3.9Pro. CAChe Workstation 分子軌道計算 |
| HPアドレス | http://www.agr.okayama-u.ac.jp/ApplEnz/ |
| 事例 | 反応予測 |