1929年、当時の二日市町魚市場近くで創業。魚肉練り製品全般を製造し、百貨店やスーパーなどに卸している。「練り製品は食感が命。引き継がれてきた製法や素材にとことんこだわっている」と井上専務取締役。商品に応じてすり身のブレンドや加熱方法を変えることで、かまぼこの弾力性のある歯ごたえ、天ぷらのもちっとした食感など、それぞれに適した口当たりを実現。また、職人の手作業により成形された天ぷらは、機械では出せないうま味を引き出している。岡山の桃太郎ねぎや大ぶりな淡路島の玉ねぎなど、こだわりの素材を大きめにカットし、食感を楽しめるようにしている。
2022年に中島俊子氏が社長に就任。企業スローガンやミッション、ビジョンなどを確立し、会社ホームページやテレビCMを一新するなど、新しい時代にふさわしいスタイルを打ち出している。一方で、食生活の欧米化などで練り製品の消費量が年々減少傾向にある中、先人たちが築き上げたブランドを伝承するため、多角化、BtoC、社外との協働などの取組を積極的に進めている。
2022年11月に県庁通り沿いにオープンさせた総菜・弁当店「はせいのおそうざい 惣」は、和食調理経験のあるスタッフが中心となって、四季折々の献立を考案している。中でも弁当は100食の大口予約が入ったこともあり、注文が増えることで祖業の練り物を支える従業員全体の自信にもつながっているという。県外への進出計画も進めており、12月には広島市西部に開業する大型商業施設内に2店舗目をオープンさせる予定。
食品を取り扱う小売業者をサポートして未・低利用魚の消費拡大につなげようと、食品ラベル作成業務を個人商店などからも請け負うビジネスモデルを提案し、「第11回おかやましんきん地域活性化支援制度エリアサポート」最優秀賞を受賞した。その他、県内の小学生とコラボレーションして弁当やおにぎりの具を開発するなど、岡山が誇る魚食文化を次世代に残そうとしている。
今後は、商品製造で重要な工程では伝統の手作業を残しつつ、事務処理においてDX化を強化する考え。地方の食品製造業によるデジタル化のモデルケースを構築して企業価値を高め、創業100年を社員みんなで祝おうと心を一つにしている。井上氏は「商品開発に加え、若い人材の育成、技能継承を進めていき、時代を見極めながら歴史と伝統を守っていきたい」と話す。
【おかやま産業情報】2024年秋冬号 掲載
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