1955年、旭川ダムの建設に従事した先々代が創業し、77年に法人化。3代目の英明氏が入社した当時は、公共事業の減少などにより経営危機に直面しており、倒産予定日を決めるほどだったという。地域からの信頼、豊富な重機や車両、笑顔の多い社風という強みに注目し、民間工事にシフトチェンジ。地域のさまざまなニーズに対応する「お困り事解決サービス」を始めた。
「建設業は大きな工事しかしないというイメージがあり、仕事内容をPRしてイメージを変える必要があると感じた」と小坂田氏。会社を広く認知してもらうため、施工例の紹介や季節の話題を掲載した「笑顔通信」を新聞折り込みチラシで配布。コロナ禍前は年1回交流イベントを開き、会社を身近に感じてもらうようにした。
建部町と久米南町で依頼を受けており、実家の解体、ほ場のあぜの工事、物置の建設といった大がかりなものから、雨どいの掃除、農地の草刈り、墓地の木の伐採といったものまでさまざま。価格も3,000円から300万円にわたる。高齢化、過疎化といった地域の事情を反映し、デイサービスの車が入るためのスロープ舗装、空き家の解体、不要品の片付けなどの依頼も多い。顧客の顔が見えるBtoCの取引は社員の励みになっているという。
互いの仕事がカバーできるよう社員の多能工化を進めており、必要な資格は全額会社で負担。これにより、残業は月平均3時間程度に減少し、3年前から完全週休二日制に移行。異業種からも若年層が入社し、多様な人材が活躍する環境が整っている。経営面では、DXで会社のお金の見える化に取り組み、原価管理ソフトで日々の工事損益を管理し、財務状況を毎年社員と共有している。一連の改革で黒字経営が続き、利益率もアップ。地域経済の中心的な担い手が認定される地域未来牽引企業や、若者の採用・育成に積極的なユースエール認定を受けた。
地域で管理しきれない農地を有効活用するため、農業生産法人「アグリファーム福渡」を設立。約9万平方メートルの農地で稲作に取り組んでおり、高齢者の働く場を創出している。「過疎高齢化が先行して進むこのエリアは、35年後の岡山県の姿。しかし、だからこそ生まれるニーズもある。地域の同業他社が廃業、人員縮小が進む中で、防災や災害復旧に対応でき、住民の困り事解決で地域に貢献できる企業を目指していきたい」と話す。
【おかやま産業情報】2025年年度末号 掲載
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株式会社小坂田建設
住所/岡山市北区建部町川口1417
https://www.osakada.co.jp