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File.60  熊屋酒造有限会社

日本酒造り一筋で地域の活性化に貢献

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  • 古い町並みにたたずむ老舗蔵元
  • 山田錦を40%まで磨いた「伊七 大吟醸」
  • 毎年2月に開催される新酒まつり。子どもが楽しめるイベントもあり、家族連れで賑わっている

江戸中期1716年、庵谷家3代目当主・伊七氏が創業した歴史ある蔵元。当家は紀州熊野本宮大社の分社として創建のため、現在の倉敷市林に移住。四方を神社や寺院に囲まれ、参拝者の街道として賑わった。当時の娯楽はお酒。湧き出る井戸水とお米に恵まれていたこともあり、酒屋を創業した。

現当主・晴男氏は14代目。引き継いだ頃は、日本酒の消費は減少し、価格が安い普通酒が主流。日本酒業界が衰退しており、「このままでは価格競争に負ける」と、自社製造へ転換し、県外への市場開拓に力を入れた。試行錯誤を繰り返し、自社ブランド「伊七」を売り出した。「新たなスタートを切る」という意味で、原点でもある創業者の名を付けた。

酒造りのこだわりは、地元岡山へのこだわり。酒米は、県産の山田錦・雄町・朝日米・あけぼのを使用。水は、裏山から湧き出る軟水と、少し固めの硬水を使い分けている。特に、9割が岡山県産である雄町は、他品種に比べ稲が高く台風に弱いため、栽培に手間が掛かり農家や酒蔵、杜氏泣かせだが、「個性的で味わいのあるお酒」と人気の酒米となった。2年前から雄町を使用した新しいブランド「庵」で、首都圏をターゲットに売り出し、岡山の酒をアピールしている。

町並みに、栄えていた頃の面影がなくなり、地元活性と自社PRのため、7年前から「新酒まつり」を開催。初めは地元の助けを借りながらの開催だったが、今はシャトルバス4台、大型バス2台を出すほどの賑わいを見せている。また、地元郷内の休耕田を再利用した朝日米で、純米吟醸酒を製造。限定ブランドとして数量限定で販売し、地元の活性化につなげた。

展示会やイベントなどの催事では、消費者から生の声を聞き、それを元に生産農家や杜氏と改善を繰り返している。「いい条件を揃えるなど、目先を変えただけでは生き残れない。誰もが飲んでおいしい、誰からも好かれる酒造りを心掛け、丁寧な製法を貫く」と語った。現在は香りを楽しむような日本酒が多く、食事を楽しみながら飲む「食中酒」をキーワードに、料理が引き立つ酒造りに力を注いでいる。

【おかやま産業情報】2018年夏号 掲載
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熊屋酒造有限会社
住所/倉敷市林705
TEL/086-485-0007 FAX/086-485-0465
https://ja-jp.facebook.com/ishichicom/

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