昭和20年代後半、岡山大学医学部の患者カルテや検査記録・帳簿、学術文献雑誌の保存製本をするため、「大学製本所」と名付けて創業。以来、学術雑誌の合本製本をメインにこだわった事業を展開している。
高度経済成長期だった昭和30~50年代は記録のほとんどが紙媒体で、大学や官公庁、研究所、病院図書館などから受注する保存製本のみを行っていても経営は安定していた。
しかし、平成になるとパソコンや携帯電話、スマートフォンが登場し、情報も電子化した。平成17年ころ、電子書籍が普及して大幅な時代の変化を痛感。受注が安定していた保存製本の冊数は減少し、全盛期に比べて製作数が半減した。
経営を立て直すために印刷分野への事業転換を考えたが、製本所や職人が減少していく中、製本業を守る使命感に駆られ、このニッチな分野での事業展開を決意した。平成28年には、少子高齢化や大学・官公庁・企業の予算の削減など逆境からの脱却と製本技術の伝承を目的に、生き残りをかけて大手製本会社のグループの一員となった。
当社は手作業による小ロット生産を得意とし、希望の製品を1冊から作ることができる。社員11人のうち3人が厚生労働省認定の一級製本技能士資格を取得しており、その技術を社内で伝承。会社全体の技術力を上げ、職人技を生かした付加価値の高い製品を提供している。
また、「本の修理屋さん Book Hospital」は「本を大切に」という思いから始まった。個人の思い出の本や絶版本など、週に1~2冊程度、修理の依頼を受けている。
近年では、デザイン会社や企業、個人から依頼があり、ノベルティやバインダー、メニューファイル、会社の記念誌、御朱印帳、個人出版物など、あらゆる相談に応じている。
「今後は、県内産の和紙やデニムを用いたコラボ商品の企画を考えている。ものづくりに特化した企業であり続け、さまざまな業種の企業と協力して紙で作れるものは何でも挑戦したい」と語る。
【おかやま産業情報】2019年夏号 掲載
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有限会社大学製本所
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