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File.91  株式会社辻本店

「御前酒」の蔵元として219年にわたり酒造を続ける

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  • 本社事務所がある主屋は江戸時代の建築で、登録有形文化財に指定されている。与謝野晶子・鉄幹夫妻、谷崎潤一郎ら多くの文人墨客らが訪れた
  • フランスのコンクールで金賞を受賞した「1859」
  • 辻本店のスタンダードナンバー「純米 美作」

 旭川の穏やかな流れに沿って、のれんを掛けた格子窓の商家が軒を連ねる。真庭市勝山、旧出雲街道の宿場町に「御前酒」で有名な蔵元・ 本店はある。江戸時代の1804(文化元)年に創業。以来219年にわたり、歴史あるまちで酒造業を営んできた。

 赤色の瓦となまこ壁が特徴の社屋は、町並み保存地区の景観によく溶け込んでいる。その向かいにある酒の貯蔵庫を改造した建物には、蔵元直営ショップ「SUMIYA」、お食事処「西蔵」があり、観光拠点として付近のにぎわい創出に一役買っている。

 勝山藩の殿様への献上酒であったことからその名が付いた御前酒。良質な旭川の水を使い、「濃醇辛口」と呼ばれるコクとキレのある味わいが特徴だ。米以外のアルコールを添加していた普通酒が全盛だった1970年代に、全国の酒蔵と協力していち早く純米酒の普及に尽力するなど、歴史を重んじつつ現代に合う酒を志向してきた。現社長の 総一郎氏は7代目に当たり、2012年に先代の父から承継。「誠実なる製造販売」を社訓とし、姉で県内初の女性杜氏である 麻衣子氏とともに酒造りをしてきた。

 総一郎氏は2019年、全ての日本酒を岡山発祥の酒米・雄町で作ることを目指す「全量雄町化」を宣言。雄町は岡山県が生産量の90%以上を占めているものの、8割以上は他県の蔵元で消費されていることを憂慮してのアクションだった。価格面でのハンディはあったが、県内一円の雄町栽培農家と取り引きするなど努力を重ね、2023年醸造分をもって宣言を達成した。

 100%雄町米の酒は、国内外で高い評価を得ている。2022年は、フランスの日本酒コンクール「Kura Master」で、特約店限定販売の新商品「1859」が金賞を獲得。同コンクールの審査員は全員が現地で活動するワインのソムリエで、テロワール(土地の風土や気候などを生かした味わい)が評価されたと分析する。また、広島国税局の清酒鑑評会で「純米  美作」と「純米吟醸  如意山」が優等賞に輝いた。

 全量雄町化達成後も、天然乳酸菌を取り込む古代製法「菩提もと」による醸造の全量化に取り組むなど、向上心は尽きない。「個性的な酒を生み出すことで産地間の競争を生き残り、日本酒の国際化に対応していきたい」と話す。


【おかやま産業情報】2023年春号 掲載
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株式会社辻本店
住所/真庭市勝山116
TEL/0867-44-3155 
FAX/0867-44-5290
https://www.gozenshu.co.jp/

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