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File.94  岡山県湯郷温泉 花の宿 にしき園

癒やしの空間と旅行プランを提供する

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  • 泉質はナトリウム塩化物泉。「美肌の湯」の名に違わず、保温、血行促進の効果があるとされる。写真は男性用浴室「古城の湯」
  • 2022年オープンした露天風呂付きセミスイート。ハイエンドだけでなく一般客室にも専用露天風呂を設け、個人旅行の需要に対応する
  • 料理長が腕によりをかけた懐石料理。野菜や卵などは地元産にこだわる

 美肌の湯で知られる湯郷で古くから温泉宿を経営。会社設立は1961年で、2015年に旅館の大改装を行った。個人客、特に女性をターゲットとして、貸し切り露天風呂や露天風呂付き客室、岩盤浴室などを整備。ロビーには優雅な香りのアロマオイルを焚き、押し花や季節の生け花で来館者を出迎えている。ネット予約などにも取り組み、旅行サイトのキャンペーンにも積極的に活用している。
 新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言などが発出された際には休館を決断した。「自粛要請に沿うと同時に、経営にメリハリを付けることで赤字幅の縮小に努めた」と若旦那の下山巧真氏。全国旅館ホテル生活衛生同業組合(全旅連)青年部の岡山県部長として、全国の同業者と情報交換し、生き残りを模索した。
 休館中も無為に時を過ごさず、以前より勉強していた各種補助制度についてさらに理解を深めた。行政担当者とも折衝を重ね、中小規模の宿泊施設が生き残ることができるような支援を根気強く要請。コロナ禍後の観光需要回復を見据え、国の補助を活用して高付加価値の客室改修などを行って旅行者の受け入れに備えた。
 湯郷に訪れる観光客の数は、瀬戸大橋開通時期の年間40万人をピークに減少。コロナ禍前の時点では20万人を切るまでになっており、地域の観光業者が一体となっての誘客が求められている。そこで取り組んでいるのが、体験型コンテンツ付きの宿泊プランの企画だ。
 湯郷の旅館で宿泊しながら、近隣のしいたけ農場や人気パン店を巡るプランを作成している。美作市海田地区では、「天空の茶畑」として知られる絶景を満喫しながら、カフェでスイーツを食べる。下山氏は市の担当者と計画書を作成し、同業者の取りまとめやサポートに奔走。取り組みは観光庁の補助事業に採択されたほか、全旅連青年部の褒賞制度で全国の準グランプリに輝いた。
 この他、廃業した店舗の撤去事業や温泉街近くを流れる吉野川の花火大会など、地域振興に向けた取り組みをプロデュースしている。「自分たちのような旅館の若手がリーダーとなり、観光地として生き残りを図っていく」と下山氏。「中小旅館にも経営感覚が求められる時代。部屋単価・客単価の上昇に向けた事業を積極的に打ち出していきたい」と将来展望を語る。


【おかやま産業情報】2024年新春号 掲載
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岡山県湯郷温泉  花の宿  にしき園
住所/ 美作市湯郷840-1
TEL/0868-72-0640 
FAX/0868-72-3312
http://www.nishikien.jp







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