国内シェアトップを誇るこいのぼりメーカー。創業者の徳永春穂氏は日本画家で、美人画の大家として知られる伊東深水に師事。1947年、大空を泳ぐこいのぼりの姿と終戦後の日本の復興を重ね合わせ、自ら筆を取り手書きした和紙こいのぼりの製造・販売を始めた。その後、息子の深二氏の入社を機に全国展開を開始。1990年代、優美な錦鯉を写実的に表現した春穂氏渾身の作「京錦」が大ヒットし、続いてリリースした「吉兆」とともに多くの家庭で揚げられた。取り扱い店舗は全国500社にものぼる。
核家族化や少子化、集合住宅の増加など、社会情勢や住環境の変化に応じ、ベランダや室内に飾る小型の製品も開発。新しい自社ブランド「Puca(プーカ)」は、パステルカラーに虹や星、花などの柄が付いたこいのぼりで、室内に飾るだけでなく、おもちゃとして子どもが手で触って遊ぶことができる。ひな人形や羽子板、一升餅を背負うリュックなど、他の節句用品にも展開。若い世代など新たな顧客層へのアプローチを試みている。
「同業他社が早くから小型製品を製造する中、当社では伝統文化が壊れてしまうという懸念から従来のこいのぼりにこだわっていた。その一方で、変化を続けないと文化そのものが消えてしまうという危機感もあった。葛藤を抱え続ける中、古いものを守りつつ新しい需要を掘り起こす現在のスタイルに落ち着いた」と現社長の徳永夕子氏は思いを語る。
毎年6月20日の「世界難民の日」に合わせ、東京の国際連合大学で子どもの成長や世界平和の祈りを込めたこいのぼりを掲揚。かつてはフランス・パリのモンマルトルの丘やスイス・ジュネーブの国連事務局などにも掲げ、世界各地にこいのぼり文化を発信してきた。
社内では頻繁にプロジェクトチームを結成し、仕事上の課題を解決するだけでなく、新しいアイデアが出やすい雰囲気をつくるようにしている。残業時間の軽減や育児・介護休暇の取得促進など働き方改革にも力を入れている。
昨年はメタバース上にバーチャル展示室を開設し、会社の歴史や商品情報を発信。「仮想空間での接客・販売やイベントの開催など、可能性を無限大に秘めている。現実空間はもちろん、デジタルの中でもこいのぼりを泳がせたい」と話す。
【おかやま産業情報】2024年年度末号 掲載
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株式会社徳永こいのぼり
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