2020年10月1日 発信

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2020.7(Oct.2020)
・SLOW BUT STEADY
 コロナ禍は収束していませんが、世の中では様々な活動が始まっています。「Go Toキャンペーン」も全国展開となり、倉敷美観地区にも賑わいが戻って来つつあるようです。岡山大学でも10月1日から対面授業が始まりました。山陽技術振興会の活動も世の中の動きに合わせて再開するつもりですが、構成メンバーの年齢も考えて「SLOW BUT STEADY」を旨とします。技術交流会、工場見学会、山技振サロンは当分休会とします。山陽人材育成講座事業は、様々な創意工夫のもとにリモート講座を実現し、対象拡大に鋭意努力中です。
 最近の講演会、展示会などのイベントは、すべてWEB開催です。岡山県、倉敷市、商工会議所、などのイベントはすべてネット開催。山陽技術振興会でも人材育成事業は、事業の存続に関わるので早くからリモート講義実現に取組んできましたが、基本事業の方は「対面を旨とする精神」で手をこまねいてきました。しかし、「デジタル庁」ができる時代に応じてWEB会議ができる程度の体制整備は近く実現しようと考えています。  

・岡山県知事表彰(岡山県工業技術開発功労者)
 10月2日(金) 山技振締切で3件の応募がありました。締切日10月8日(木)までに岡山県に提出する。

「“菅裕明(すがひろあき)さん”について、ふたたび」
 菅義偉(すがよしひで)さんが第99代内閣総理大臣になった。秋田のイチゴ農家出身という親近感と今後への期待とが相俟って就任直後の支持率は高いようである。歴代の1位は小泉さん、2位は鳩山さん、3位が菅さんとのことなので、ご祝儀相場は当てにならない。菅さんの名前で思い出したことがある。昨年の山技振たより10月号には、有隣会大原孫三郎・總一郎記念講演会の「異端は認められた瞬間に先端に変わる」(菅裕明東大教授、岡山大学エグゼプティブアドバイザー、岡山大学卒)の講演内容についてやや詳しく紹介した。講演会の後の懇親会で趣味のギター収集のことや日本刀のことから菅姓のルーツにおよび、先祖は瀬戸内海の今治市大三島の大山祇神社につながるらしいこと、同じ有機化学で懇意にしておられる岡山大学工学部の菅誠治(すがせいじ)教授も同様なルーツらしいことが話題になり、同席者から「官房長官の菅(すが)さんはどうなんでしょう?」、「それは、良くわかりません」というやり取りがあった。
 あれから一年、菅先生の起業した「ペプチドリーム」はどうなっているか調べて見た。現在は、2017年に起業した「ミラバイオロジクス」との利益相反のこともあり、菅先生は「ペプチドリーム」とは一線を画して居られる。但し、創業者株主として現在も第二位の大株主である。現在の会長は創業時の社長窪田規一氏(筆頭株主)、社長はリード・パトリック氏である。2020年12月期の業績予想は、売上高100億円、経常利益54億円、進行プログラム数114、従業員数137名で、極めて労働生産性の高い会社である。最近、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬の研究開発を開始したことを公表し、注目株として株価が一時的に上昇した。新型コロナウイルス並びに将来的に発生しうる変異株を含めたコロナウイルス全般に対して、特殊ペプチドを用いた抗ウイルス治療薬の研究開発を開始し、3つのアプローチで候補化合物の同定を目指しており、複数のパートナー候補と協議中で、その一環として6月には米国メルク社と共同研究開発に合意した。
 菅裕明先生は、2006年に「ペプチドリーム」を東大先端研内に設立、2013年に東証マザーズ、2015年には東証一部上場を果たした。また、2017年には「ミラバイオロジクス(株)を設立した。ミラバイオロジクス(株)は、未来のバイオロジクスであり、タンパク質の機能を生かした医薬開発を目指すものである。ペプチドはアミノ酸が2〜50個つながった分子であり、50個以上つながったものをタンパク質と呼ぶ。インスリンは両者の中間に位置するペプチド(=短いタンパク質)である。天然型の通常ペプチドおよび通常タンパク質は、わずか20個の通常アミノ酸の組み合わせで構成されるのに対し、菅先生の合成する特殊ペプチド、特殊タンパク質は、20個の通常アミノ酸と天然にはない特殊アミノ酸との組み合わせで構成するものである。さらに、天然にはない環状構造にしたり、疎水基を導入して分子の形を変顔にしたりして、我々の細胞がこれまでに見たこともない分子を作り出すのである。(このとき活躍するのが、菅先生が開発した「フレキシザイム」という人工のRNA触媒であり、生体内で遺伝暗号表に基づいて通常アミノ酸から合成されるペプチド、タンパクが、試験管の中で特殊アミノ酸を原料に偽造遺伝暗号表に基づいて特殊ペプチド、特殊タンパクが合成される。)さらに、細胞を騙してこれら異様な分子を細胞に潜りこませる仕組みも準備してある。これらのシステム特許、ビジネスモデル特許を網羅的に抑えたものと言えよう。怖いお化けを無尽蔵に創り出すツボを手に入れた現代の水木しげるである。【kajix】

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