2021年12月1日 発信

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2021.9(Dec.2021)
・山技振サロン年末大交流会は、今年も中止します。
・令和3年度第2回理事会(本人出席のみ有効、予定表に記入して下さい)
 日時:令和4年3月29日(火)18:00〜19:00(懇親会なしの予定) 於倉敷商工会議所新会館【詳細は新年に確定】
・第17回「村川・難波技術奨励賞」
 11月から募集開始、締切は来年1月末。科学、技術、産業の発展に資する成果を奮って応募するよう周囲にもPRして下さい。詳細は当会に問い合わせるか、当会ホームページの「技術奨励賞」の項参照。最近の受賞一覧も掲載。賞金10万円を3件に贈呈。
・「山陽技術雑誌Vol.70」原稿募集
 本誌は技術雑誌であると同時に会員相互の情報誌で、論文、紹介文、エッセイ何でも結構です。締切は1月末。各社広告も募集します。「山陽技術雑誌」は毎年5月300部発行、当会会員・広告主および当会と雑誌交換がある企業・研究所・大学・国会図書館など約100ヶ所に送付。
・岡山県児童生徒科学研究発表会・表彰式 12月5日(日) 9:20〜於岡理大
 表彰式を非公開で実施する由だが、例年通り当会会長賞を4名に授与する。
・ロボカップジュニア2021岡山ブロック大会 in ライフパーク倉敷
 2021.12.19(日)開催予定、当会会長特別賞の賞状を1名に授与する。
・第85回岡山県児童生徒発明工夫展(A)・2021未来の科学の夢絵画展(B)
 11/15(月)審査会(於岡山県産業振興財団):事前審査で選出の作品から(A)特賞12点、(B)特賞10点を決定。12/7(火)表彰式(岡山県産業振興財団)にて当会会長賞を2人に授与予定。A.作品名「ミラクルペーパーホルダー」岡山市立三勲小学校6年大重糸(おおちょういと)、B.画題「私の心の身だしなみ」 岡山県立倉敷天城中学校1年
寺本蒼空(てらもとそら)
・岡山理科大学第21回OUSフォーラム2021:11月22日〜12月5日(オンライン開催)
 研究シーズ発表97件、講演:キラリと光る企業の紹介(モリマシナリー椛纒\取締役森郁夫)、http://renkei.office.ous.ac.jp
・人材育成事業
 新型コロナの影響で昨年度は赤字となったが、今年度は様々な努力の結果V字回復を続けており、黒字決算を実現できる見込み。人材育成会担当者会議を12月3日、AB(アドバイザリーボード)会議を1月31日開催予定。12月から企業訪問を順次実施予定。受講生一人当たり約千円のリモート化経費が嵩んでいる。一方、遠隔地の出前講義の場合は講師の旅費交通費が掛かる。これらの点を解消する受講料改訂を行う予定。
佐藤卓也氏(開APAN MAGGOT COMPANY)の農林水産研究開発功績者表彰
 令和3年11月24〜26日東京ビックサイト青海で開催の農林水産省主催アグリビジネス創出フェア2021に於いて
佐藤卓也氏が「ミツバチの代替ポリネーターとしてのヒロズキンバエの利用」で令和3年度(第22回)民間部門農林水産研究開発功績者表彰を受けた。大変喜ばしいことである。佐藤氏は、平成27年村川技術奨励賞を受賞、山陽技術雑誌Vol.63.(2016)に「人工光型植物工場に対応する受粉ハエの開発」を寄稿しておられる。
 糖尿病性壊疽のマゴット(ウジ)治療は数千年前から続く”最新治療法”である。オーストラリア原住民(Aborigines)は、ハエ幼虫(ウジ)が傷治療に有効であることを数千年も前から認識しており、創の清浄化にウジを使用した。アメリカ先住民(Mayan Indians)は、動物の血に漬け乾かした布で創を覆うことで傷にウジを湧かせて傷を治療した。近代でも、戦争中にウジの涌いた創が速く治癒し、結果的に兵隊の命が助かった事実を多くの軍医が目撃した。1990年代には抗生物質抵抗性の感染性潰瘍が出現し、糖尿病、動脈硬化症等の潰瘍疾患が増加、重症化し、これらの難治性潰瘍治療に難渋することとなった。そこでマゴット治療の有効性が脚光を浴び、英国では1995年NHS(国民健康保険)に、米国では2004年FDA(食品医薬品局)に認可されるなど欧米中心に広く普及しているが、わが国では保険認証が進んでいない。
 佐藤氏は、岡山大学医学部三井医師がオーストラリア留学で体験したマゴット治療を日本でも普及させようとしていることに共感して、企業を早期退職してベンチャー(JMC 2005年)を立ち上げ、糖尿病性壊疽治療用の無菌ウジの人工育成法を独力で開発し医療に提供していたが、保険適用外のため事業性に難があった。3週齢の元気なウジを常に供給する必要があり、それを過ぎるとウジが育ちすぎて蛹になり、成虫(ハエ)になって役立たずになる。佐藤氏は蛹〜成虫の利用について可能性を調査し、マンゴーの受粉にハエが使われることを突き止め、農業用ポリネーターのアイデアに到達し、農業用に無菌蛹の供給を試み、徐々に用途が拡大した。さらに、安定した用途確立のため岡山大学とイチゴ栽培へのビーフライ利用の共同研究をスタートさせ、農水省の競争的資金も得て広域連携を実現し、ハウス栽培イチゴへの利用マニュアルが完成し、普及速度が一挙に高まった。現在47都道府県すべての農家に提供するまでになっており、農業用途、特にマンゴー、イチゴのハウス栽培になくてはならないものにまで育てあげた。ヒロズキンバエというありふれた虫の幼虫から成虫までを医療と農業分野でカスケード利用する発想と技術は”もったいない精神”の鑑であり、ものづくりニッポンにふさわしい技術である。佐藤氏の「医療用無菌ウジ」の量産化は「本邦初」の技術に過ぎないが、医療と農業を貫くヒロズキンバエの「カスケード利用技術」は十分独創的である。
 イチゴの収穫は12月〜5月頃までだが、厳冬期はハチの活動が弱まるため正常果出荷率は50%以下、1月は20%以下にもなるが、ビーフライを補完的に投入することで正常果出荷率は75%となり、ミツバチのみの放飼に比べて粗収益は数倍になった事例もある。イチゴの授粉のみならず、マンゴーや玉ねぎ、人参、アボカド、サクランボ、などにもミツバチ代替、またはミツバチの補完的受粉昆虫として全国的に普及している。【kajix】

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