第19回ワンデイエクササイズ(2012年)
「 岡山理科大学 茂中・三宅チーム」最優秀賞に輝く
課題:玉島町並み保存地区周辺の魅力を生かした地域の核となる施設を自由に提案する。
「第19回ワンデーエクササイズ」が11月10日(土)、倉敷市福田町古新田のライフパーク倉敷で開催された。県内の大学4校、専門学校3校、高校1校から11チーム、99名の建築を学ぶ学生が参加。『玉島町並み保存地区周辺の魅力を活かした、地域の核になる施設を自由に提案する』をテーマにアイデアを凝らしプレゼンテーションした。
提案作品はどれも玉島の問題点を意識し、人が集まる楽しい空間を表現していた。また図面、模型の完成度も高く、プレゼンにも学生の熱意を感じることができ、夢あふれる作品が並んだ。特に最優秀賞作品は大胆に敷地を海に浸して、潮の呼吸を体感できる施設とし、玉島の歴史的町並みとの調和を考えている魅力ある提案であった。
審査にあたっては、新進気鋭の建築家である中村拓志氏を招き、各チームに対して、具体的かつ的確な講評をしていただき、テーマの捉え方、プレゼンの方法など、参考になった事柄が多くあった。そしてワンデーエクササイズは、学生達にとって「まちづくり、ひとづくり」に、それぞれ得るものは大きかったのではないかと思います。
事業委員長 長尾 悟
主催: 岡山建築設計クラブ
共催: (社)岡山県建築士会
(社)岡山県建築士事務所協会
(社)日本建築家協会中国支部岡山建築家の会
(社)日本建築学会中国支部岡山支所
(社)日本建築積算協会中国四国支部岡山県部会
NPO法人 まちづくり推進機構岡山
後援: 岡山県 、倉敷市、岡山市
最優秀賞 岡山理科大学 茂中・三宅チーム
茂中 大毅、 三宅 悠生、 小野 善行、 伍賀 達哉、 古賀 美奈子
齋藤 皐月、 須谷 悠希、 上西 徹
タイトル:「blessing of the earth brething」 (地球の息吹からの恵み)
コンセプト
倉敷市玉島は、海と共に暮らし、海の恵みを享受して発展してきた港町である。現代の人間は、地球の自然環境のリズムに対する感覚を忘れてしまっている。そこで私たちは、人々がもう一度自然との関わり合いを深め、自然に対する畏怖や恩恵の感覚を取り戻すために、レストラン、市場、宿泊施設、釣り船やクルーザーが発着する船着き場などを備えた「オーベルジュ」を提案する。この「オーベルジュ」は「潮の満ち引き」により建物が動き、時間によって表情が変化する。敷地を海に浸して、潮が入り込む仕組みをつくり、「潮の満ち引き」によって海が呼吸するように浮き沈みする建築をつくる。海の動きに合わせて動く場所と動かない場所があり、動く場所では床や屋根の高さの変化とともに海の呼吸を体感でき、動かない場所では水位の変移を目撃して海の呼吸を知ることができる。干潮・満潮や月の満ち欠けという時間や季節の移り変わりで建物が異なる浮き沈みをすることで、海上市場、海中レストラン、満月の野外ステージ、タラソテラピー等、多様な活動のための場所が生まれ、新鮮な海の幸を味わい、海に癒され、海のリズムを感じながら訪れた人々は自然の息づかいを体験する。敷地の中には陸路と航路が巡り、町の人や通りすがりの人が陸からやってくるとともに、漁船や遊覧船に乗って海からもアプローチでき、施設を介して交流できる。建物の屋根は、江戸時代から建ち並ぶ問屋・土蔵といった玉島の歴史的な町並みのタイポロジーとの調和を考えて形状や向きを決定した。「潮の満ち引き」と合わせて、一層分の高さで建物が沈んでいる時、屋根は広場や通路や船着き場となり、潮の動きを感じながら釣りや日向ぼっこを楽しめる。屋根の下では、水面のゆらぎや水位の変化が見え、海を身近に感じられ、色々なサービスを楽しみながら海や地球の恵みを享受できる。現在の玉島には港町として栄えた当時の活気や賑わいが感じられない。そこで、この提案により、漁船や遊覧船の周辺で起こる人々のアクティビティが海にも賑わいをもたらし、地元と観光客の活気が混ざり合うことで魅力が生まれる。人間の営みが地球の呼吸によって行われている感覚を取り戻す場所となり、海の息吹を感じ海に寄り添いながら、地球の恵みを享受して生活する姿に戻る場所を提案する。
第19回ワンデーエクササイズを終えてー
岡山理科大学 准教授 弥田 俊男
昨年度2011年4月より岡山理科大学建築学科に准教授として着任し、ワンデーエクササイズには指導教員として2011年に引き続き本年2回目の参加でした。前回は優秀賞でしたが、今回は2年目にして最優秀賞を獲得することができました。
長年東京の設計事務所で設計の実務に携わってきましたが、縁あって私にとって未知の岡山の地で、設計を専門とする立場から建築を教える事になりました。東京や京都大阪をはじめとする現状の全国レベルに比較すると、岡山に来る前に予想した通り、正直なところ岡山の建築学生のレベルはまだまだ遅れていることは否めないと実感しましたが、自分としてはそれを底上げしていきたいと考えて乗り込んできた訳です。そして昨年、今年で19回目を迎えたこのワンデーエクササイズという、岡山の建築を学ぶ学生にとって本当に得難い機会を与えてくれる素晴らしい取組を知り、大変感銘を受けました。毎年審査委員長として招かれる日本を代表して活躍する建築家と同じ会場に集い、対面してプレゼンテーションを行い、講評を受けながら言葉や考えを体感することは、これから社会に出て活躍していく学生にとって大変に貴重な財産となる体験です。このような機会をきっかけとして、岡山の建築学生どうしが積極的に競い合いながら縦横の繋がりを広げていき、岡山の建築が面白くなっていくことが非常に楽しみです。
今回の課題は倉敷市玉島地区が敷地でしたが、学生達には、海とひとつながりの河口、玉島の伝統的町並み、潮の満ち引き、海の恵み、といったこの地の持つ魅力、財産について、全員で議論を重ねて深く考えてもらいました。そして、現実社会と乖離した無責任な突拍子も無さではなく、本当にこの地に実現すれば、新しさとふさわしさをもった姿で地域に新たな力を漲らせ、驚きや安らぎといった色々な喜びを感じながらこの地の魅力や財産を楽しめる場所となり、現代の人々が見失ってしまった大切な気持ちや感覚を取り戻すことができるような、これからのための建築のあり方について、気付き感じて考えてもらい、その中からこの地にこその設計提案が生み出されてくるような指導を心掛けました。
受賞作品
最優秀賞
岡山理科大学
茂中・三宅チーム
優秀賞・OKC賞
岡山理科大学専門学校
RISEN Aチーム
学会奨励賞
中国デザイン専門学校チーム
奨励賞
岡山理科大学専門学校
RISEN Bチーム
高校の部奨励賞
岡山県立岡山工業高校
岡工建築科魂チーム
参加チーム
美作大学 福祉のまちづくり学科チーム
山陽学園大学 山陽学園大学チーム
ノートルダム清心女子大学 ノートルダム清心女子大チーム
岡山理科大学 茂中・三宅チーム
OUS teamKチーム
岡山理科大学専門学校 RISEN Aチーム
RISEN Bチーム
岡山科学技術専門学校 カギセンAチーム
カギセンBチーム
中国デザイン専門学校 中国デザイン専門学校チーム
県立岡山工業高等学校 岡工建築科魂チーム